本城です。

今回は久しぶりに懐疑論者の紹介をします。エミリー・ローザです。エミリーは当時9歳だった1996年に、「セラピューティック・タッチ」を検証したことで有名になった少女です。

ここでいうセラピューティック・タッチとは、いわゆる手かざし療法のこと。ニューヨーク大学看護学部の名誉教授ドロレス・クリーガーが体系化したヒーリングの一種です。セラピューティック・タッチを習得したヒーラーは、患者の身体から少し離れたところに手をかざすと「エネルギーの場」を感じ取ることができ、その乱れを整えることで治療ができるといいます。

本当でしょうか? これに興味を持ったのがエミリー・ローザでした。エミリーが当時通っていたコロラド州の小学校では「サイエンス・フェスティバル」という自由研究を発表する機会があり、彼女はその題材となるものを探していたところでした。

ちょうどいい題材に出会ったエミリーは、セラピューティック・タッチの大前提となる「エネルギーの場」というものが本当に実在するのか検証してみることにしました。

検証のための実験に集まったのはコロラド州ボールダーで開業する21人のヒーラーたち。エミリーによれば、クリーガーにも参加を呼びかけたそうですが時間がないとして断られたそうです。

※ヒーラーは懐疑論者の検証を嫌うため、この実験に21人も集まったのはすごいこと。子どもだからと甘くみられていたのかもしれません。96年にジェイムズ・ランディがフィラデルフィアの懐疑団体と協力してセラピューティック・タッチの検証実験を企画した際は、60以上もの看護師団体や個人に検証を申し込んだにもかかわらず、返答があったのはわずか一人。このときは742,000ドル(約6000万円)の賞金を懸けて、その一人、カリフォルニアの開業医ナンシー・ウッズが挑戦しました。しかし結果はクリアできずに終わっています。

さて、エミリーの実験は次のような手順で行われました。(材料費はわずか10ドル)

  1. エミリーがヒーラーと1対1で向かい合って座る。
  2. テーブルにはダンボールで作った衝立を用意。衝立にはヒーラーの左右の腕を通せるように2つの穴が開いている。また穴から向こう側が見えないように布が被せられるようになっている。
  3. ヒーラーは穴に手を通し、手のひらを上に向ける。
  4. エミリーはヒーラーの左右どちらかの手の少し離れたところに手をかざす。左右どちらにするかは毎回コイン投げをして決める。
  5. ヒーラーは左右どちらにエミリーの手があるのか、「エネルギーの場」を感じ取って当てる。
  6. 実験の一部始終はビデオで録画する。

実験の様子の一部は、以下の動画の1分34秒あたりから見られます。

実験前のヒーラーたちは自信満々でした。当然です。エネルギーの場を感じ取るのは基本中の基本、セラピューティック・タッチの大前提なのですから。

テストは全部で280回行われました。ところが、そのうち当てられたのはわずか123回。正答率は44パーセント。偶然でも50パーセント当たるはずの正答率を下回る残念な結果に終わりました。

エミリーはこの実験の結果を医師にも協力してもらいながら論文にまとめ、『アメリカ医学協会ジャーナル』に投稿。1998年に掲載されました(実際の論文)。当時11歳での論文掲載は史上最年少。アメリカで最も若い科学者が誕生したとして、大きな話題を呼びました。

ちなみにそのジャーナルが出された日は4月1日だったため、クリーガーは「それがエイプリル・フールの冗談であることを希望する」とコメントしています。残念ながら実際は冗談などではなく、本当でしたけれども。

さてエミリーはその後、コロラド大学に進学し、心理学を専攻。現在は大学院で学んでいるようです。