超常現象は真相だけを見たらつまんないことも多い

こんにちは。蒲田です。

今回はちょっと、超常現象の調査に関する話をしてみます。歴史をみてみると「昼なのに、真っ暗になった」なんて話が、超常現象の記録として残ったりしています。

1780年にアメリカ、ニューイングランド地方で起こったものは、きちんと記録に残っているため特に有名です。現象のインパクトが大きいので、どうしても「普通ではない原因があったのだ」と考えてしまいがちです。「普通の原因では説明できない」と感じてしまうのです。

あなたが、超常現象を信じない人なら、隕石の衝突でチリが空に舞い上がったのではないか?とか、大きな火山の噴火があったのではないか?なんて考えてしまうかもしれません。しかし、多くの場合、真相はもっと日常的なことだったりします。

例であげた1780年のニューイングランドの事例は山火事だったことが判明しています。あれ?今「なぁんだ、つまらない」と思いませんでしたか?

こういった、珍しい現象には、珍しい原因があると感じてしまうのは、心理学でいう「代表性バイアス」のひとつの表れだと思われます。もともと、人間にはそういう性質があるということですね。

「昼なのに、真っ暗になった」なんて現象の原因を、珍しい度の高い順番にならべると、以下のような感じになるでしょうか。1は人それぞれなので置いておくとしても、上のほうが「昼なのに、真っ暗になった」という現象の原因としてふさわしいと思いませんか?

  1. 超常現象
  2. 隕石の衝突
  3. 火山の噴火
  4. 山火事

人の心理は珍しい現象には、珍しい原因があると感じてしまう傾向があるのですが、実際に超常現象といわれているものを調べてみると、「本当の原因は良くある現象だった」という結果になりやすいのが現実です。実はこのことには理論的裏づけがあったりするんです。

それは「ベイズの定理」と呼ばれるものです。タクシーの話が有名なので紹介します。

問題10 『ある街のタクシーの15%は青で、85%は緑である。あるときタクシーによるひき逃げ事件が起きた。一人の目撃者によると、ひいたのは青のタクシーであるという。ところが現場は暗かったこともあり、目撃者は色を間違えることもある。そこでこの目撃者がどれくらい正確かを同様の状況下でテストしたところ、80%の場合は正しく色を判断できるが、20%の場合は実際の色と逆の色を言ってしまうことがわかった。さて、証言どおり青タクシーが犯人である確率はどれだけだろうか。』
S:8割正解なんだから、80%の確率で青タクシーだよ。
S:もう少し少ないんじゃないかな。70%くらい。
T:このように、条件がついた時の確率を求める方法が、ベイズの定理なんだ。
S:どうやって求めるんですか。
T:さっきやった、「くじ」に当てはめるという方法を使うとわかりやすいよ。街のタクシーの台数を100台とすると、15台は青、85台が緑。さらに、証人が間違える確率を入れると、次のようになる。
その街のタクシー(100台)
/          \
青(15台)          緑(85台)
/  \           /  \    (この中で20%間違える)
正(青)12台 誤(緑)3台  正(緑)68台 誤(青)17台 ←(これがあることを忘れてしまう)
S:わかった。青タクシーのうちで正しい場合は12台で、青タクシーと思い込む場合も含めると12+17=29台。そこで、正しい青タクシーである確率は、12/29=0.414となり、青タクシーである確率は41%だ。
S:えーっ。そんなに小さいの。
S:緑のタクシーを青と間違える場合を忘れているから、多く見積もってしまったんだ。
「数学と心理学 ベイズの法則」より

他にも「ベイズ推定 – Wikipedia」の「臨床検査における偽陽性」の項目なんかが参考になります。ちょっと複雑だったでしょうか?

要点は、基礎となる確率(緑のタクシーの多さ、病気の発生率の低さ:事前確率)が、最終的な結論に大きな影響を与える(青という証言だったのに緑だった、病気だと判定されたのに病気じゃなかった)というところです。でも普通の人は、「青という証言だった」とか「病気と判定された」という事に目がいってしまうため、本当の確率とは違った印象を持ってしまうことがあるというわけです。

たとえ、「山火事で一部の地域が真っ暗になる可能性なんてとても低い」「隕石で一部の地域が真っ暗になる可能性は高い」という状況であっても、隕石より山火事の方がずっと頻繁に起こるため、真っ暗になった原因が山火事である可能性の方が高くなるということが起こるわけです。

「珍しくもない現象が、珍しい結果を生み出すことがある」そして、それは当たり前だってことは、注意しておくといいのではないでしょうか。

まあ、実際のところ「調べてみたら本当はそんなことは起こっていなかった」という結論が多いのも、超常現象の特徴なんですけどね…。あれ?これが意味するのは…。

超常現象は真相だけを見たらつまんないことも多い”へ5件のコメント

  1. twilight より:

    これを読んでマルセロ・トルッツィの名言「並外れた主張には、並外れた証拠が必要となる」を思い出しました。

  2. 蒲田 より:

    > twilightさん
     シンプルだけど深い、まさに名言ですよね。

  3. タノQ より:

    私は 劈面一揮 大事了畢 ていう禅語を思い出したです。
    意味は 正面突破で肝腎要は解決 です。
     昼なのに空が
    じっさい、そういう経験ありましたよ。たんなる気象の変化だったけど、あのときは晴天だったのに突然くらくなって雹が降ってきて車の屋根ガンガンばしばし鳴って、びっくりした。7~8年前の大阪市内でした。

  4. 蒲田 より:

    > タノQさん
     雹なんかも、一瞬で空が変わっちゃいますよね。超常現象として記録されてるのは、他に天候の変化とかが起こらなかったからかも。

  5. ポム より:

    昭和47年ごろ私は幼稚園児で、授業中昼間なのに、空がだんだん信じられないくらい真っ暗になりました。真黒な雲なのか、何なのか。そして窓から国道の高架が見えるのですが、街灯も車のライトも点き始めたのが分かりました。先生が「もう夜みたいですね。」なんて言っていたのを覚えています。放課後下校している途中、明るくなり始めて今考えても、不思議でなりません。

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