本城です。3月11日にオカルト作家の山口敏太郎さんが『超常現象のつくり方』(宝島社)という本を出版されました。(※タイトルはひらがなで「つくり方」。漢字の「作り方」や「造り方」ではないです)

私はこの本を読んでみましたが、正直なところ疑問だらけの内容でした。ここではそういった点をとても全部は書ききれませんが、一部でも書いておきたいと思います。

「マツコの知らない世界」で発言がカットされた?

『超常現象のつくり方』では、まえがきにて、山口さんがTBSの番組「マツコの知らない世界」に出演されたときのお話が書かれています。

この番組のオカルト否定回のひどさについては、かつて私も指摘したことがありますので、ご存知ない方は、こちらのまとめをご参照ください。
https://togetter.com/li/934479

さて、こうした指摘について山口さんは、本当は全部知っていて番組でも話していたが、カットされたというようなことを書かれています。

本当でしょうか? もちろん生放送ではありませんから、カットされたご発言自体は当然あるでしょう。ですが(必要なら放送された当該のご発言を全部示しますが)、指摘されていることを話していたが全部カットされたなんて、およそあり得ない説明です。

もしそのようなことをされていたなら、まったく矛盾する発言を何度も行っていたという支離滅裂な状況になります。

いったいどういう意図のもと、どのような流れでご発言されていたのでしょうか。整合性のある明確なご説明をいただきたいところです。(もちろん鵜呑みにせず、スタッフさんに事実確認はします)

また、もし番組側も全部知っていてカットしていた場合、死者が3人も出ている事故映像が使われているのにそれを嘲笑い、その事実がわからないようにカットしていたということになります。

単に確認不足で無知だったという状況より、もっと悪質になるのですが、その点もご理解されていないようです。

スターチャイルドの正体?

さて、「不思議現象を解き明かす」と銘打たれた本編の内容もひどいところが多々ありました。たとえば「スターチャイルドの正体」と書かれた項目。

ここではスターチャイルドがどういったもので、所有者を含めた肯定派の人たちがどういった主張をされているのか、まるで理解されている形跡がありません。

おそらく「スター・チャイルド・プロジェクト」の公式サイトすら、まともに読んでいないのではないでしょうか。正体に関する話も何を言いたいのか要領を得ず、役には立たないものでした。

ユリ・ゲラーはマジシャンだと広く認知されている?

「ユリ・ゲラー」の項目も疑問だらけでした。まず彼を否定する根拠として、(一部の人ではなく)多くの欧米人には有名なマジシャンだと認識されているからだ、というような話が紹介されています。(アメリカ人にいたっては、マジシャンという認識しかない、とか)

そもそもこの話からして信じがたいです。検証可能なかたちで明確な根拠を示していただきたいところです。

また続きの記事では、「このユリ・ゲラーの行動からして、彼がマジシャンであることは間違いない」という逸話が紹介されています。それは、マリックさんがゲラーに手品を見せた際、タネの権利を売ってくれ、と頼まれたという話です。

ところが、昨年7月に山口さんが「ATLAS」で書かれた記事では、上記の話を「あくまで都市伝説であるとリスクヘッジするが」と前置きをして書かれています。(しかも権利の話は出てこない)

なぜ都市伝説だった怪しい話が、「間違いない」という主張を導く根拠として『超常現象のつくり方』では書かれているのでしょうか。

そもそもこの逸話は、実際にマリックさんに取材された方の記事によれば、単に「種を教えてくれ」という話だったといいます。「お金はいくらでも払う」とか「権利を売ってくれ」などという話は出てきません。

また、『超常現象のつくり方』でこのくだりの次の段落では、「ユンゲラー裁判」についても書かれています(任天堂との裁判で超能力を示せなかったという話)。しかし、なぜか本書では一転、裁判の話を「あくまで都市伝説であるが」と前置きされています。

ところが山口さんが、これまで発行されている有料メルマガ「サイバーアトランティア」のサンプルページでは、ユリ・ゲラー否定の根拠となる実話として紹介され続けています。

私は、この「ユンゲラー裁判」について調べたことがありますが、根拠になる話は何もなく、まず間違いなくホラ話です。もし山口さんが、この件について怪しい話だと認識を改められたのなら、ちゃんとその経緯を読者にもわかるかたちで説明して、訂正するべきではないかと思います。

第9の呪いにトンチで対抗した作曲家がいる?

「第9の呪い」も残念でした。もともと第9の呪いとは、交響曲9番を作ると、その作曲家は死んでしまうという話です。

本書では、この呪いに対し、「トンチで対抗した粋な作曲家がいる」として、フィンランドの作曲家シベリウスの話が書かれていました。

この話は、こちらの個人ブログの記述と大体かぶりますので、ネット検索して書かれたか、共通のネタ元があったのかもしれません。いずれにせよ問題なのは、このシベリウスの話自体がデタラメだということです。

シベリウスが交響曲8番の楽譜を燃やしたとされるのは1940年代の後半です。彼は当時、すでに80歳前後でした。現存する最後の作品が書かれたのは1946年です。

つまり呪いに対抗して交響曲8番を燃やしたことで、その後、順調に作曲活動を続けられたということはありません。また彼が8番を燃やしてしまったのは、強すぎる自己批判精神ゆえだったとされており、第9の呪いを恐れていたという事実自体がありません。

こうしたことは彼に関する文献、マッティ・フットゥネン『シベリウス』、ハンヌ=イラリ・ランピラ『シベリウスの生涯』などを読んで確認さえしていれば、すぐわかることでした。

役に立たない参考文献欄

『超常現象のつくり方』には、信じられないことに参考文献がたった7つしかあげられていません。もうスカスカです。

しかも雑誌の号数を書かない、タイトルを間違える、同じタイトルで同じ出版社から出た本と雑誌があるのに、どちらかわからないように書いてある……など、まるで読者の役に立たない参考文献欄でした。(一部、本文中で言及がある場合もありますが、それが孫引きかどうか判断できないようになっています)

本来、こういう本での参考文献というのは、著者の根拠を示すものでもあります。また主張に疑問があれば読者が検証できるようにするものでもありますし、参考にした他の著者への礼を示すものでもあります。

ですが本書には、そういった意志がまったく感じられません。仮に全部書けないから省略したなら、そう書くべきですし、大幅に省略した分はブログで示すことなどで対応できることです。

反面教師にしたい本書

さて、こうした姿勢について、ノストラダムス現象研究家の山津寿丸さんが、過去にわかりやすくまとめられていますので、ご紹介しておきます。

「山口敏太郎 -ノストラダムスの大事典 -」
https://www42.atwiki.jp/nostradamus/pages/2217.html

「その認識はウィキペディアをはじめとする幾つかのインターネットサイトを基にしたようなものだが、情報源を正しく読み取らずに一知半解によく分からない認識を披露している場面もしばしばである」

「ウィキペディアに書いてあることすら誤読しているレベルの杜撰な調査に立脚した『エンターテインメント』は、読者を楽しませるというよりも、単に馬鹿にしているだけではないのだろうか」

その通りだと思います。本書にも、おかしな点は多くあります。たとえばこれまでの指摘以外にも、

・超常現象を超常現象で説明する
・よく調べずに間違った推測をする
・文章のつなぎがおかしく、前後の文章が論理的につながらない
・項目の前半で書いていたことを後半で忘れる
・肯定派からの反論があるのに端折る、もしくはそもそも調べてないので気づいてない
・裏付けを取る努力もせず伝聞情報を紹介する

などなど。ASIOSの他のメンバーからも指摘はありますし、とても多すぎて全部は書けません。

もちろん本書の中でも、たとえば銚子事件に関する分析データなど、一部まともなところはありました。ですが、すでにASIOSの本や他書で書かれていることを出典も示さずに書かれているところもあり、疑問は多いです。やはり全体としては低評価とせざるをえません。

本書は「不思議現象を解き明かす」とか「超常現象の嘘を暴く」、「超常現象のつくり方を教える」といった本とは違うと思います。

しいて言えば、この本自体が「超常現象のつくり方を実践している」でしょうか。ですから本書は反面教師にもなると思います。そういう意味では学べることも多いはずです。