スカイフィッシュの調査

調査・執筆:横山雅司


1994年、アメリカはロサンゼルス在住のビデオ編集者ホセ・エスカミーラが、撮影したビデオ映像をチェックしていると謎の生物が映っていることに気がついた。

その生物は半透明で棒状の体をし、体の両側には何対かのヒレまたは羽のようなものがついていた。

のちに「スカイフィッシュ」と名付けられたこの謎の生物は、その後に世界中から報告が相次くことになる。

スカイフィッシュのイラスト(制作:横山)
スカイフィッシュの想像図(制作:横山)

大きさは数センチから数メートル。飛行速度は時速300キロ近くになるという。メキシコの巨大洞窟「ゴロンドリナス洞窟」はスカイフィッシュの巣窟とされ、数々のスカイフィッシュが撮影されてきた。

また、日本ではテレビのバラエティ番組で取り上げられて以来、各所に話題をふりまいてきた。

その正体は一体何なのだろうか?

スカイフィッシュの正体

現在では、スカイフィッシュの正体はカメラの手前を通り過ぎたハエなどの羽虫の残像にすぎないことがほぼ証明されている。

超高速だという飛行速度も、カメラのすぐ近くにいる虫と考えれば常識的に考えられる普通の虫の速さで説明できる。

わかりやすく解説すると、例えば手を伸ばして遠くの富士山の一番上を指さして、一秒かけてふもとを指さすように指を降ろしたとする。

この時あなたの指は、秒速3776メートルで移動したのだろうか?

もちろんそんなことはない。富士山との距離にもよるが、指はせいぜい秒速数十センチでしか動いていないはずだ。

本当は手前にある物体(この例えの場合は指先)の速度を、遠くにあると勘違いして遠くの物を参考に速度を考えれば、同じ1秒間に本当は数十センチしか移動していない物が、見かけ上3776メートルも移動したように勘違いしてしまうことになる。

ゴロンドリナス洞窟の中から撮った写真

ゴロンドリナス洞窟でよく映るのは、おそらく単純に周囲に羽虫が多いこと、縦穴の洞窟にむけてカメラを構えるので背景が暗くてハッキリ写りやすいこともあるだろう。

ちなみに真面目な自然物のドキュメンタリー番組で、ハイスピードカメラをゴロンドリナス洞窟に持ち込んで縦穴の底にダイブする冒険家の映像が撮影されたことがあったが、謎の生物が写ったという話は聞かない。

スカイフィッシュの再現映像

ここで筆者が実験で撮影した映像を見てもらいたい。これは室内に迷いこんで来た虫を使って撮影した映像である。

一目瞭然、残像がスカイフィッシュ状に写り込んでいる。

また、写真でも下のように写る。なお、写真の虫はコガネムシの仲間を撮影したもので、動画の虫とは違う種類。色が異なるのもそのため。(被写体の虫とカメラとの距離は関係ない。近くても遠くても同じように写る)

左上に写っている。(撮影:横山)
左上に写っている(撮影:横山)
典型的なスカイ・フィッシュの姿を再現。(撮影:横山)
典型的なスカイフィッシュの姿を再現(撮影:横山)

ハエは1秒間に100回以上も羽ばたくという。仮に30分の1秒で撮影しても一コマに3回以上の羽ばたきが写る。

1回の羽ばたきの中でカメラに向かって強く光を反射する角度が1回あるとすれば、一コマに3回以上の強く光る羽が写ることになる。

動画を見てほしい。このCGでは羽を水平にした時に光を強く返すように設定してある。

仮に一コマに6回羽ばたいたとすれば、進行方向にぶれながら6枚の光る羽が映る。ただし胴体に当たった光は常に反射しているので明滅したようには映らない。

(制作:横山)

これとは別に、例えば蛍光灯などのように高速で明滅している光源で撮影した場合、羽ばたくようなものではない被写体でもスカイフィッシュ状に映る可能性がある。

世界中でスカイフィッシュの映像や写真が撮影されているのも、単に世界中にビデオやカメラが普及したからに過ぎない。

撮影される虫の種類や写る角度、周囲の明るさやカメラの性能などによって映り込むスカイフィッシュの姿は変わるだろうが、おおむね残像説で説明がつく。

(制作:横山)

ちなみに、映るものは必ずしも虫である必要はない。カメラに残像を残す程度の速さで移動する物体であれば、それらしく映り込む可能性は常にある。

その他、スカイフィッシュをこの目で見た、あるいはその背に乗った、またはテレパシーで会話をしたと主張する人物も存在する。

漫画的である事を持って否定するつもりはないが、少なくともスカイフィッシュがテレビで話題になる以前にスカイフィッシュについて言及した話を聞いたことはない。