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石川県で起きたファフロツキーズの調査

調査・執筆:本城達也


2009年6月4日の午後4時35分頃、石川県七尾市中島町にある中島市民センターの駐車場で、空からオタマジャクシが降ってくるという奇妙な現象が起きた。(※1)

※1 こういった怪雨現象は、英語で「空からの落下」を意味する「Falls from The Skies」の略語として「ファフロツキーズ」と呼ばれている。

当時、現場の駐車場にいたのは男性職員1人のみ。何かが落ちる音が背後から聞こえたため振り返ったところ、全部で100匹ほどのオタマジャクシが落ちているのを目撃したという。

当時の様子。(中島市民センター提供)

当時の様子。(中島市民センター提供)

この奇妙な事例については、地元の新聞に取り上げられたことから多くの人に知られることになった。専門家などは様々な仮説を唱えて原因を推測しているが、どの仮説にも欠点があると言われ、決定的なものは1つもないとされる場合が多い。

 

ファフロツキーズを調査する

全国的にも話題になったこの事例を調査するため、筆者は現地へ行ってきた。調査日は2009年6月12日。現地に着くと市民センター職員の方が、実際にオタマジャクシが落ちていた現場を案内しながら取材に応じてくださった。

ここではまず、取材で得た関係者の情報をもとに当時の状況を再現してみたい。次のような状況だったという。

第一発見者の男性は当時、建物の外に出て職員玄関脇に設置してある冷温水機の様子を確認するため、その前に立っていた。すると、「ボタッ、ボタッ」という上から何かが降ってくる音がしたので振り返ってみたところ、黒っぽいものがいくつも駐車場に落ちていることに気づいた。

落ちていたものを見て驚いた男性職員はすぐに他の職員を呼びに行き、みんなで辺りを調べたところ、全部で100匹以上のオタマジャクシが落ちていたことを確認。職員の1人が現場の様子をデジカメで撮影して記録したという。

現場に落ちていたオタマジャクシの写真

現場に落ちていたオタマジャクシの写真1。(中島市民センター提供)

現場に落ちていたオタマジャクシの写真

現場に落ちていたオタマジャクシの写真2。(中島市民センター提供)

天気は最初の発見時の午後4時35分頃が曇りで、その後、4時50分頃にはほんの少しだけ雨が降った。落ちていたオタマジャクシは市民センターを正面に見た場合、駐車場の左半面に70~80匹、右半面には20~30匹という割合。

それぞれはお腹の大きなものや、足が生えているものなど様々だった(※2)。車の上に落ちていたオタマジャクシは各所有者が洗い流し、地面に落ちていたものも他の職員が洗い流してしまったため現存するものはない。

※2 このオタマジャクシの種類について、筆者は日本両生類研究会に写真を送って問い合わせてみた。しかし残念ながら写真からは分類形質が読み取れないため、種を特定することは困難とのことだった。

現場の見取り図

現場の見取り図。(制作:本城)

以上が当時の状況である。ここからは、これらの情報を踏まえた上で、オタマジャクシが落ちていた原因としてはどのようなものが考えられるのか、主な仮説を検討してみたい。

 

イタズラ説

まずはイタズラ説。現場は職員の駐車場である。誰かに気づいてもらいたかったり、嫌がらせ目的のイタズラだったりすれば可能性は考えられる。

オタマジャクシを投げ捨てられそうな建物は、3階建ての市民センターと2階建ての裏の倉庫のみ。建物と駐車場の間は少し距離があるため、それなりの範囲にまくためには2階以上の高さが必要になる。

しかし第一発見者は当時、市民センターの方を向いて立っていた。そのため、まず市民センターの2階からまいたと考えた場合、位置が低いので第一発見者の視界に入って気づかれてしまう。

では3階からならどうかというと、これも無理だ。以下の写真を見てもらえればわかるとおり、市民センター裏の3階中央には窓がないのである。そこで市民センターに残るのは屋上からになるが、屋上は常時施錠されているため専用の鍵がなければ上がることはできない。

駐車場側から見た中島市民センターの様子

駐車場側から見た中島市民センターの様子。(撮影:本城)

一方、駐車場を挟んだ裏の倉庫の2階は窓の下が床のない吹き抜けになっているため、こちらからまくことも不可能。つまりイタズラの可能性はきわめて低いと考えられる。

反対側の倉庫の様子

反対側の倉庫の様子。(撮影:本城)

 

竜巻説

これは竜巻によって巻き上げられたオタマジャクシが上空から降ってきたとする説だ。気象学に詳しい福島大学の渡邊明教授によれば、オタマジャクシが上空に巻き上げられるためには、最低でも風速25メートル以上の風が必要だという。

そこで金沢地方気象台に当時の気象状況を問い合わせてみた。すると6月4日は竜巻が起きるような気象状況にはなく、風速25メートルほどの強風はもちろん、実際に竜巻が発生した記録もないとのことだった。そのことから、この説も可能性は低い。

 

鳥説

これは鳥が上空からオタマジャクシを吐き戻すなどして落としたとする説。有力視されているのは、現場近くの水田でよく見かけるアオサギである。

日本鳥類保護連盟・石川県支部の時国公政支部長によれば、アオサギは毎年6月頃、ヒナに餌を与えるため、オタマジャクシなど数十匹以上を腹に入れて巣に運んでいるが、その際、たとえばカラスに襲われるなどして吐き出した可能性があるのではないかという。(※3)

※3 時国氏と日本テレビの「真相報道バンキシャ!」のスタッフが現地を取材した際には、アオサギが現場近くの水田でオタマジャクシを捕っている姿がカメラに捉えられている。

中島市民センター前の水田に生息するオタマジャクシ

中島市民センター前の水田に生息するオタマジャクシ。(撮影:本城)

しかし、この鳥説に対し否定的な見解を示しているところもある。山階(やましな)鳥類研究所である。2009年6月にテレビなどでこの話題が取り上げられた際には、よく同研究所の「鳥が食べた物は消化され、 吐き出したら団子状になっているはず。それに鳥が飛んでいる最中に吐き出すことはあり得ない」といった見解が紹介されていた。

そして、これをもって鳥説を否定する根拠としているメディアが多かった。(※4)

※4 他に否定の根拠として見かけたものとしては、第一発見時の上空に鳥は飛んでいなかったという話がある。しかし落下物に気づいて上を見上げたときには、すでに周囲の建物に隠れて見えなくなってしまった可能性が考えられる。

騒動から約半年経った2009年11月、筆者は山階鳥類研究所に問い合わせを行なった。すると現在は先のような見解を取っていないことがわかった。問い合わせに応じてくださった同研究所の平岡考氏によれば、当時の取材では鳥説に否定的な見解を述べたものの、後にサギ類を研究している筑波大学の藤岡正博准教授から話を伺う機会を得たという。

その際、鳥が上空で餌を吐き戻すことはあり得ないことではなく、実際に観測されており、吐き戻された餌はバラバラの状態であったことを教えていただいたそうだ。

また同様の観測結果があることは、筆者が別に問い合わせた北海道アオサギ研究会の松長克利氏からもご教示いただいた。松長氏によると、アオサギが飲み込んだ餌の消化程度は、餌を飲み込んでからの経過時間に左右されるという。

餌を捕ってからそれほど時間が経っていない場合、吐き戻す餌は未消化のバラバラの状態(※5)であり、松長氏はその様子をこれまでに何度も観測しているとのことだった。

※5 胃に直接入れず、鳥類が持っている「そ嚢(のう)」と呼ばれる食べたものを一時的に貯蔵しておける器官に入れていた場合も、その器官では消化液が分泌されないため、未消化の状態で吐き出せるという。

 

結論

ここまで主な仮説をそれぞれ検証してきた。最後に結論を出すならば、最も可能性が高い仮説は鳥説ではないだろうか。現場周辺にはアオサギが数多く生息しており、そのうちの数羽が上空でオタマジャクシを落とした可能性が考えられる。

これは中島町のケース以外にもいくつか当てはまる。筆者が別に現地調査した埼玉県久喜市の2つのケースでは、一方が原因はチュウサギ 、もう一方はカラスの可能性が高いことがわかっている。

またASIOSのメンバーでもある会津大学の寺薗淳也氏が現地調査を行なった宮城県の2つのケースでも、原因はウミネコかサギの可能性が高いという結論に至っている。

なお、寺園氏が大崎市で調査した際に出会った老年の女性は、次のような興味深い話をされていたという。

「(鳥が落とすことは)昔からよくあったんだよ。最近テレビで騒いでるけど、別にそう騒ぐほどのことでもないと思うけどね」

どうやら以前から目撃者はいたようだ。しかし、そういった話はわざわざメディアに報告されることがなかったため、これまで一般に知られることもなく埋もれていたということのようである。

ただし、すべてのケースが鳥の仕業であるとは限らない。2009年の夏に全国で報告されたケースは、ASIOSがチェックしているだけで39例もある。メディアで頻繁に取り上げられたことを考えれば、中にはイタズラで撒いた者がいた可能性なども考えられる。

 

参考資料

  • 『北國新聞』(2009年6月5日、6月14日付)
  • 『富山新聞』(2009年6月21日付)
  • 「埼玉、宮城県でもオタマジャクシ 民家に落下」(共同通信、2009年6月17日配信)
  • 「オタマジャクシ『早く解明を』」(共同通信、2009年6月17日配信)
  • 「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ、2009年6月14日放送)
  • 「めざましどようび」(フジテレビ、2009年6月20日放送)
    ※番組の資料については中根優作氏よりご教示いただいた。
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