本城です。

毎週、火曜の夜7時56分から、テレビ東京で放送されている「新説!?日本ミステリー」という番組をご存知でしょうか? そもそも新説じゃないようなネタを、毎度自説に都合の悪い事実を無視しながら紹介してくれる超常系の番組です。

実は先週、この番組では「アポロ陰謀論」(アポロの宇宙飛行士たちは月に行ってないという説)を取り上げていました。しかし、それがあまりにもトホホな内容だったので、今回取り上げる次第です。

まずは超常現象のガチ否定派として有名な大槻義彦教授が登場するシーン。この方、アポロ11号の月面着陸は疑わしいとして、宇宙飛行士たちが持ち帰った「月の石」に疑問をぶつけます。

いわく、地球に持ち帰ったあと世界中で分析したのに・・・

「惑星系とか月の形成とか、そういう歴史が手に取るように分かるはず。しかしなんの変哲もない地球の石ころと同じだという結論になって、全然研究者が興味を失っているわけ。要するに月の石と称するものは、なんの変哲もない地球の石と同じだったということ。非常に疑わしい」

ホントに疑わしいんでしょうか?

【疑問点1】

・惑星系とか月の形成とか、そういう歴史が手に取るように分かるはず?

→まず、この前提が間違っています。アポロ11号が採取してきた石だけでは、惑星系や月の形成の歴史まで手に取るようにわかりません。これについては、『最新・月の科学』(NHKブックス)という良書の中で、著者の一人で専門家でもある寺園淳也さんが書いている至言を紹介しておきます。

「私たちが地球の岩石を理解する時に、サハラ砂漠とゴビ砂漠の岩石で、すべてを理解したことになるだろうか?」

【疑問点2】

・月の石は、なんの変哲もない地球の石ころと同じだという結論になった?

→なっていません。これも前掲書から。

「(アポロが持ち帰った月の石は)水分はおろか、鉱物構成要素レベルで水(OH基)がまったくないことが明らかにされ、水にあふれた地球の岩石とはまさに別世界だった。ナトリウムやカリウムをはじめとした、比較的揮発性の高い元素にも乏しく、地球上では生成し得ない岩石・鉱物ばかりが見つかった」

ちなみに11号が持ち帰った石の中からは、「アーマルコライト」という新鉱物も発見されています。この鉱物、現在では地球でもいくつか発見されていますが、11号が月に行った当時は未発見でした。そのため乗組員3人の名前を取り、「アーマルコライト/Armalcolite」(Armstrong, Aldrin, Collins)と名づけられ、国際鉱物学連合(IMA)からも新鉱物として認められています。

少なくとも「なんの変哲もない地球の石ころ」ではないですよね。十分、珍しいですから。

【疑問点3】

・研究者が興味を失っている?

→失っていません。そもそも、大槻教授が登場した次のシーンに出ていた国立極地研究所の荒井朋子さんは月の石(隕石)を研究対象としており、その対象となる隕石由来の月の石は、アポロが持ち帰った石とも時折比較しながら研究が進められています。

また、こちらの記事でも、「アポロが持ち帰った石の研究は今も続けられている。将来の分析機器の発達を考え、研究用試料は小出しにされているからだ」と書かれています。

大槻教授の発言に関しては以上。彼がおかしな発言するのは今に始まったことではないですけどね。

続いては後半部分で扱っていた「NASAがアポロ11号のオリジナルの記録テープを段ボール700箱以上も紛失した」という件についてです。実はこれ、2006年の8月に世界的なニュースになっていて、新説でも何でもない今さらネタなんですが、番組では「NASAの隠蔽工作だ」ということにしたいみたいでした。

その印象を強めるため、メールを送って無視されたり、直接NASA本部に出向いて拒否されるところは演出として許容範囲。けれどもNASAに電話するシーンは放送しないほうが良かったんじゃないか、と思いました。だって「トゥルルル」という呼び出し音のあと・・・

「電話をいただいた方、業務は月曜日から金曜日です」

と、留守電の内容を字幕つきで放送しちゃうんですよ。これじゃ、ただ受け付け時間外に電話しているだけというのが丸わかりです。NASAから拒否されているということを印象付けたい気持ちはわかるのですが、さすがにここはコントでもおっ始めたのかと思いました。素直に受付時間中に電話しようよ、と。

ちなみに、こういったコントまでして紹介したこのネタ、番組では「今後も調査を続行する」ということで、まだ引っ張るつもりみたいでした。ところが、番組的には残念なことに紛失したデータの一部は、ニュース発表の2ヵ月半後の2006年10月末に、オーストラリアの大学で発見されているんです。当時の第一報はこちら。

もちろん番組ではこのことを紹介してません。今後は、どうやってネタを繋ぐんでしょう。