本城です。

ASIOSの予言検証本やイベントでもお世話になりました、信州大学の菊池聡さんの新刊が先月出版されました。『なぜ疑似科学を信じるのか』(化学同人)です。

本書は菊池さんいわく、「疑似科学やニセ科学の問題を幅広く概観する入門書の役割」(P.5)を持たせつつ、「私たちが、なぜニセの科学を信頼がおける科学だと『思い込んでしまう』のかを考える」(同上)本にしたかったそうです。つまり、ご専門の認知心理学からのアプローチも試みた本ということでしょう。そこに本書の独自性があります。

ここで内容を簡単に紹介してみますと、第1章から第3章までは、疑似科学の概観紹介と科学の方法論や疑似科学との違いについての解説です。続く第4章と5章は疑似科学にまつわる心理的な錯誤についての解説。第6章から第9章までは具体的な事例を取り上げて検討し、最後の第10章は疑似科学の教材としての役割や、合理性についての検討などが続きます。(巻末には各ジャンルのおすすめ参考図書リストもあり)

第1章から第5章までは、どちらかといえば入門者向けの解説が続きますが、ここをしっかり読んでおけば、6章以降の具体的な事例についての検討が、よりクリアに理解できるはずです。

本書では何かを説明する際に、通常の説明のあとに「たとえば~」というように、よりわかりやすく言い換えての説明が頻繁に見られます。これはつい難しくなりがちな科学を扱う本にとって、読者の理解を助ける良い役割を果たしていると思います。

菊池さんは決して疑似科学をこき下ろすようなことはしていません。問題点は指摘されていますが、その問題点を知ることで、より科学についての理解は深まり、教材としての疑似科学の有効性も見えてきます。

本書を読むことで、科学はもちろん、疑似科学に対するイメージも変わる人がいるのではないでしょうか。疑似科学を信じることは異常なことではなく、むしろ自然なことです。本書では「人間くさい」(科学)とも表現されていますが、まさに言い得て妙です。

まだこのての話に興味を持ったばかりという方。本書は入門書として最適です。疑似科学についてはもちろん、その疑似科学をとおして科学的な方法論についても大いに学べます。うまく応用すれば、日常生活での考えにもプラスになるはずです。

また、こういった話には興味を持ってきたという方。そういう方でも前半の入門的な解説は自身の考えを整理する上で十分に役立つはずです。読み進めているうちに、言いたかったことはそれだ、と思わずひざを打つ方もいるのではないでしょうか。後半の具体的事例の検討と最終章は、それだけでも大いに参考になります。

皆さん、ぜひ読んでみてください。本書が長く読まれてロングセラーになり、改訂もされながら読み継がれることを願っています。