本城です。先頃、白い筋のようなものが全体に浮き出た不思議な壺の解明依頼がありました。今回はその調査結果の報告です。

ASIOSへ問い合わせがあったのは4月の下旬のことでした。相談された方によれば、知人に頼まれて片付けを手伝った際、益子焼の壺をいただいたことが事の発端だったといいます。

その壺の中にはシソの塩漬けの干からびたものが入っていたため、家に持ち帰って中身を捨て、よく洗い、玄関のカウンターに陳列していたそうです。

ところが2日後、思いもよらないことが起こります。壺の表面に、網の目状に白い筋のようなものが浮き出てきたというのです。よく洗ったつもりだったけれど、まだ汚れていたのか……。何かの付着物のようでもあったため、相談者さんは、もう一度よく洗って陳列し直したといいます。

しかし、またもや2日後に同じ現象が起こりました。白い筋が再び現れたのです。今度は経過をみるため、洗わずに観察したところ、筋はどんどん盛り上がり、壺全体に増殖していったそうです。

そのときの様子として撮影されたものが以下の写真です。

全体に白い筋が、血管のように浮き出ていて不気味に見えますね。ちなみに壺自体にはヒビは入っていなかったそうです。また、思い切って筋のかけらを舐めてみた際には、塩味がしたそうです。

では、なぜ、このような現象が起きたのでしょうか。今回、ナカイさんのご協力もいただき、益子焼の窯業技術支援センターに写真を送って鑑定していただいた結果によれば、「貫入」という現象の可能性が高いそうです。

貫入とは、素地とその表面に塗る釉薬の収縮率の差により、焼成後の冷却時に生じる釉薬のヒビ模様のことです。(割れる時のヒビや傷とは異なります)

貫入は陶器ではよくある現象だそうですが、何かしらの要因で貫入箇所に浸透・蓄積した可溶性の塩分が、洗うことによって表面に出てくることもあるといいます。

今回の場合は、写真から判断しますと結構な量が出ているように見えますので、塩壺のような塩分濃度の相当濃い使い方をしていたと推測されるとのことでした。

実はこの塩壺として使われていた可能性を示唆するものが、今回の件では二つありました。ひとつは、相談者さんが壺を持ち帰った際、中に「シソの塩漬けの干からびたもの」が入っていた点。もうひとつは、白い筋は塩味がしたという点です。

つまり今回の壺は、かつてシソを塩漬けするために使われていた可能性が高く、表面に浮き出てきた白い筋は、塩漬けの際に長年使われていた塩分だった可能性が高いと考えられます。

ちなみにこれを裏付けるように、釉薬がかかっていない底の部分には、白い塊がびっしり付いていたことが、後に送っていただいた写真で判明しました。表面は釉薬の貫入箇所からでしたが、底は釉薬自体がないため、全面から塩分がしみ出してきたのではないかと思います。

もし今後、皆さんも同じような現象に遭遇されましたら、ぜひ貫入という現象の可能性を考えてみてください。