本城です。

先頃、『サリン それぞれの証』という本が出版されました。著者は、長年、オウム真理教の問題に取り組んでこられた弁護士の木村晋介さんです。

この本は、1995年3月20日に起きた地下鉄サリン事件を中心テーマに、その関係者の証言を集め、考察したものです。集められた関係者の証言は、警察官、医師、被害者、加害者、その親族など、多岐に及びます。

直接、事件の現場に居合わせた方たちの証言は生々しく、現場の臨場感が伝わってきました。当事者ならではの視点が、外部からしかこの事件を知り得ない多くの読者にとって、貴重なものになるのは間違いありません。

地下鉄サリン事件は20年前に起きたものですが、被害者の方々の中には今でも後遺症に苦しむ方たちがいます。こういう方たちの証言を読みますと、まだ事件は終わっていないのだということを痛感させられます。

また本書では、それぞれの証言者が、1995年3月20日の朝の行動を語っています。いつも通り通勤し、事件が起きた電車に乗り合わせてしまったという方もいれば、普段は電車に乗らないのに、たまたま用事があって事件が起きた電車に乗り合わせてしまったという方もいます。

また当時はテレビで事件を知り、第三者として見守っていた立場から、その後、被害者の方たちと深く関わるようになった方などもいます。人生は何が起きるかわかりません。

加害者の親族でもそうです。ある日、カルト宗教とは無縁だと思っていた息子が教祖の本に興味を示したかと思えば、あっという間に入信、出家。家族総出の説得や反対もむなしく、最後は大量殺傷事件の犯人になっているわけですから。

本書では、こうした様々な立場の人達の証言が、32本集まっています。中心となるのは地下鉄サリン事件ですが、他にも松本サリン事件や坂本弁護士一家殺害事件なども深く掘り下げて取り扱われています。

また他にも、オウム真理教が起こした事件の系譜や、裁判の争点のまとめ、信者の神秘体験についての考察など、参考になる情報は盛りだくさんです。(なお神秘体験の考察については、ASIOSも取材協力しました)

3月20日で、地下鉄サリン事件から20年が経ちました。もうリアルタイムでは事件のことを知らない世代が大学生になっている時代です。

遠い昔の話になりつつある今日にあって、本書は、今一度、オウムや彼らが起こした事件について考えるきっかけを与えてくれるものだと思います。ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊です。